コタロウ、あふれでる。
夕食後、しりとりをしたり、絵を描いたり、本を読んだり、それぞれが気ままに過ごしていた。
コタロウは、「学研のパーフェクトあいうえお」で遊んでいた。
「パーフェクトあいうえお」は、コタロウ5歳の誕生日プレゼント。
この購入は、迷いに迷った。
我が家は、「電源・電池のあるおもちゃは買わない」というのがポリシー。
初めてそのポリシーを曲げたのが、「パーフェクトあいうえお」。
朝起きてから、夜寝るまで、とにかく本を手にして、ページをめくって楽しんでいるコタロウ。
でも、どうしてもなかなか文字の習得が進まない。
正直、僕も焦りがあり、んー、ここはこういうものに頼るしかないかなと思って、
電池があり、電子音があるものを買ってしまった。
別に、これがすごく優れているわけではない。ただ単に「キャラクターものじゃない」というだけで選んだ。
かなり消極的な買い物だし、若干、逃げかなぁといううしろめたさもあった。
でも、コタロウはこれが大のお気に入りで、毎日なんらかの形で触っている。
この「パーフェクトあいうえお」は、「コタロウのもの」というのがモユやカンタははっきりと理解していて、絶対に触れない。
唯一例外なのは、カイノスケ。
手を出すとコタロウは、「ダメ!」と駆け寄り、彼の手の届かない高さに置く。
さて、そして今日。
コタロウは、なぜか急に、この「パーフェクトあいうえお」を横に置きながら、一気に平仮名を書き出した。
すごい勢いで、もう次から次へと。
本人も大興奮だったけど、僕もかなり興奮してしまった。
いやー、すごかった。
ひとしきり書き終えて、二人でお風呂へ。
「コタロウ、どうして字を書けるようになったのかなぁ?」
「あのね、それは練習したからだよ。」
「そうだよね、コタロウは練習してたもんね。」
そして、その後、コタロウは大声で言いました。
「あきらめなければぜったいできる こばやしゆうこ!」
感涙...。
一滴、また一滴と水がコップに滴り落ちる。
そして、ある瞬間に、コップから水があふれ出る。
コタロウの身体から文字があふれでる。
まさにそんな瞬間でした。
こういう瞬間を大人が待てるかどうか。
そのことの大切さを、あらためて実感。
文字が読めるようになり、書けるようになると、
きっとこの「パーフェクトあいうえお」ともおさらばでしょう。
その日もそんなに遠くない。
ゆうちゃん。
コタロウの中に、ゆうちゃんの言葉がどしんと居ます。