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2004年5月19日

1番小さいのが188cm、110kg、31cm

今朝は然をタクシーに乗せて保育園へ。

チェッカータクシー、運転手はKさん。
頭はツルツルピカピカ。60才前だろうか。

環七と野沢通りの交差点で対向車のタクシーが無理な右折をしてきた。
すれ違いざまに、対向車の運転手は、こちらをジロっと睨んだ。

「あんな運転して、あんなことしちゃだめだ。あれはプロじゃない。」
Kさんは言った。

なんとなくその台詞に興味を持ったので、保育園でタクシーを降りる予定を変更して、少し保育園前で待ってもらい、そのまま次の行き先まで乗せてもらった。

そこからKさんの子育て話が始まった。

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わたしは7人子どもいるんですよ。
しかも男ばっかり。
この間、一番下の子がやっと成人しましてねえ。
一番上は31歳。11年間で7人ですわ。

男はね30歳過ぎるまで所帯なんて持っちゃだめだというのが、
オレの方針だから、誰もまだ結婚してないですけどね。

7人も生まれたのはね、家内がどうしても女の子が欲しい、女の子が欲しいって言うんで、
それにつきあってがんばってたら、結局みんな男ですわ。

一度なんか、男は野菜を食べて、女は肉を食うと女の子が生まれるっていう噂を家内が聞きつけて、ほとんど1年間、ずーっと野菜ばっかり食ってました。
もうそりゃあ、大変でしたよ。

男の子ばっかりですから、よく食べるんですわ。
月に60kgの米がなくなるんですから。一俵ですよ。
家には、一升炊きの炊飯器が2つあるんですから。
お客さんは驚きますよ、そりゃあ。

絶対に米だけはたらふく食わせてやろうと思って、とにかく米はなくならないようにしました。
そしたら見事に育ちましたよ。
うちにいたら、オレなんて小人ですよ。
1番背が小さいのでも身長は188cm、
痩せてんのは体重110kg、
足が小さいのは31cm。
子どもの靴はみんな31cm以上ですから。

兄弟仲がいいから、街を連れ立って歩くでしょ。
目立つんですよ。
千代の富士親方はじめ、いろいろな相撲部屋の親方が何人も
「兄弟そろってうちの部屋に来てくれ!」ってお願いしに来ましたよ。
そりゃー大変でした。

うちはね、スナック菓子やコーラみたいな炭酸飲料は一切ダメ。
おやつはチーズと牛乳、これだけ。
その代わり、チーズと牛乳はなんぼでも飲ませたし食わせました。

おかずも冷蔵庫にあるものは子どもが好きなように工夫して、
ご飯にかけて食ってました。

ある日、納豆にマヨネーズかけるのがうまいということに気がついたらしく、
「お父さん、発見発見!!」と大喜びで教えに来ました。
納豆にチーズかけて、それにケチャップをかけるのもうまいらしいですよ。

家はね、子どもに小遣いは一切やらなかったんです。
子どもにはお金なんて必要ない。
その代わりね、欲しいものはなんでも全部買ってやった。

うそをつくのと人をいじめるのは絶対に許さなかったですよ。
もしそれやったら、オレが子どもをぶん殴りましたからね。

うちはね、小学校4年生になると、夏休みは40日間かけて子どもたちだけで北海道やら九州やらを自転車一周旅行させたんです。

近所の人はオレのことを、ひどいことする鬼親父って言ってましたけどね。
そんなの関係ないですからね、オレんとこの子どもなんですから。

長男は大変でしたよ、最初は一人で自転車旅行ですからね。
それ以後は、長男と次男が一緒に行き、それに三男が加わり…というかたちで7人で行ってました。

野宿とかするときも、必ずおまわりさんや近所の人に
「ここに泊まっていいですか。」と許可をとるように教えたり、
焚き火は夜はダメ、昼はやっていいけど火の回りには水の入ったペットボトルを置いておくこととか細かく教えましたよ。

子どもだけで旅行してるからいろいろな人が助けてくれるんですね。
ノートを持たせてますから、全部それを記録させたんです。
「○月○日 ■■■町 ××××さん トマトをもらう。連絡先は★★★★」
ってね。

夫婦はね、常に打合せしないといけないんです。
会社でも打合せするでしょ、あれと同じです。
お父さんとお母さんが言っていること違ったらダメなんです。
兄弟7人に同じことを言わなきゃダメなんです。
そのためには、ちゃーんと打合せをしなきゃ。
子どもの前で、真剣に子どものことを打ち合わせている姿を見せりゃーいいんです。

男の子はね、オレが育てるって言ったんです。
男の子は男のオレが育てなきゃだめなんです。
だからね、厳しい父親だったけど、子どもはみんなオレのこと好きだし、
本当に仲がいいですよ。

この間の一番下の子の成人式で家族全員集まったときには、
さすがに泣いちゃいましたねえ。
うれしかったですよ。
やっぱりね、本当にうれしかったですね。

あのね、子どもはね、育たないんです。

子どもは育てなきゃダメなんです。
しっかり育てないと、子どもは育たないんです。
今の親は勘違いしてるね。

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決して説教臭くなく、本当に熱心に話しを聞かせてくれた。

この運転手さんの子どもは幸せものだ。
奥さんも幸せものだ。
本当にいい家庭なんだな、と感じた。

「子どもは育てなきゃダメなんです。」
この台詞が一番力強かった。


降りるときに運転手さんはこう言った。

「またご縁がありましたら!」

僕もそう思った。

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