« 命名 | メイン | 工作 »

2004年3月 4日

傘袋を渡す仕事。

あるアパレル会社の方とお会いした。

外に出ると雨。
ふと、あることを思い出した。

2000年10月29日、日曜日。天気、雨。

珍しく原宿に出かけた。

当時、話題になっていたユニクロに行くのが目的。
ところが、そのユニクロ原宿店は混雑していて中に入るのを諦めた。

しょうがないので、近くにあるGAP原宿店に出かけた。

雨である。

GAPの入り口で、見慣れない光景に出くわした。

「こんにちは。傘袋です。足元が滑りますので気をつけてください。」

歌うように、踊るように彼女は、入店するお客さん一人一人に傘袋を手渡していた。

「GAPって、傘袋マシーンを使わないんだ。変なの。何でだ?」と不思議に思いながら入店した。
ただ、傘袋マシーンを使うよりも、手渡ししていたほうが、かなり入り口付近の混雑は緩和されているような気がした。

買うものは特にないので、どんな感じで仕事してんのかなあ、とぶらぶら店内を一周。
あることに気がついた。

入り口の傘袋の彼女が一番楽しそうに仕事をしている。
彼女は、入店するすべてのお客さんに接している。
そして、店から出るすべてのお客さんに接している。
少なくとも、彼女がそこに立って、傘袋を渡している間は。

店を出るときにどうしても気になったので、彼女に質問してみた。

「GAPって、いつも雨のときは、こうして傘袋を手渡しているんですか?」

「いいえ、今日は傘袋マシーンが壊れちゃったんです。」

そうなんだ、いつもは違うんだ。
でも、彼女は本当にいきいきと楽しそうに仕事をしていた。
店内で接客しているスタッフの表情よりずっと輝いていた。

傘袋を渡す仕事。

もしかしたら、あまりみんなはやりたがらない仕事なのかもしれない。
それをあんなに一生懸命、そして楽しめる彼女はすごい。

いまでもその歌うような声と、踊るような身のこなしは、はっきりと覚えている。

アーカイブ

About

ひとつ前の投稿>>
命名

次の投稿>>
工作