159名の卒業生のみなさん、東山田中学校1期生159名のみなさん、卒業、おめでとうございます。
また、このように多数のご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席を賜り、記念すべき第1回の卒業証書授与式が挙行できますこと、高いところからではございますが、心より厚く御礼申し上げます。同時に、ご参加の保護者の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げますとともに、新設校という状況の中で本校の教育活動に多大なご協力をいただきましたこと、厚く御礼申し上げます。
さて、卒業生の皆さんには、9月から10月にかけて、各クラス1回ずつ授業をしました。今日は少しだけその授業の続きをしたいと思います。その授業の時、こんなことをみなさんに問いかけたのを覚えていますか?
2050年。今から45年後、みなさんが60歳になった頃に、どんな社会になっていてほしいですか? そして、どんな自分になっていたいですか?
みなさんが挙げてくれた2050年の社会は、「自然がいっぱい残っていてほしい。」「争いごとがない社会。」「どこでもドアが発明されていてほしい。」「不治の病が少なくなってほしい。」などが挙がりましたね。また、2050年の自分は、「バリバリに働いていたい。」「賢くなっていたい。」「孫に囲まれていたい。」「10cm背が高くなっていたい。」「庭付きの家に住みたい。」「笑顔でいたい。」「健康でいたい。」などの意見が出ていました。2050年、そんな社会になったらいいな、皆さんが思い描いているような姿になってくれたらいいなと私も思います。でも、残念ながら、そんな保証はどこにもありません。未来はそんなに甘くもないし、明るくはないのです。
2050年頃の社会予測には、明るい話はほとんど見当たりません。人口減少し少子高齢社会が到来している日本、その一方で爆発する世界の人口、エネルギーの枯渇、自然環境の破壊、なくならない紛争、広がる経済格差。そういった厳しく激しい社会変化の中でみなさんは生きていくのです、生き抜いていくのです。そのためには、どうしたらいいのでしょうか。
私は、こう考えます。
安易に気軽に、夢だけを持たないことです。夢を持たない。その代わりに、志を持つ。
ぼんやりとした夢の変わりに、強い志を持つのです。「○○○であってほしい。」「○○○になりたい。」という曖昧な夢ではなく、「○○○にする。」「○○○になる。」という強くはっきりとした志です。
夢に志というハシゴをかけるのです。
夢が、頭の上のここらへんにぼんやりあるとすると、志がある場所は、この心のど真ん中です。志を持つということは、手の届かないところにある、夢にハシゴをかけることなのです。
卒業生の皆さんは、3年生の英語の教科書で出てきた、キング牧師の言葉、「I have a dream.」を覚えていることと思います。この言葉は大抵の場合は、「わたしには夢がある。」 そう日本語に訳されています。しかし、私はこの訳は間違っていると思います。「I have a dream.」 は、こう訳すべきではないでしょうか。 「私には志がある。私は志を持って生きている。」 キング牧師は、ぼんやりと夢を見ていたのではなく、はっきりとした強い志を持ち、生き抜いていたのだと思います。
「志す」という漢字は、「こころがある方向を目指して行く」という意味を持っています。ただぼんやり見ている夢とは違い、具体的な行動が伴うのが「志」です。夢よりも、強いエネルギーとパワーがあるのが「志」です。
では、「志」はどうやったら持てるのか。
とても簡単な方法があります。明日からぜひ実践してみてください。毎日、朝起きたら、「今日はこういう一日にする。」と思うことです。そして寝る前に、「今日はこういう一日だった。明日はこうする。」と思うことです。きっとこれならできるはずです。ほんのちょっとのことです。でも、もしかしたらこれを毎日やるというのは、すごく大変なことかもしれません。0.9と1.1の話をしたことを覚えているでしょうか。0.9をずっと掛け算していくとゼロに近づきます。1.1をずっと掛け算していくと、どんどん大きくなります。毎日のほんの少しずつの積み重ねが、将来大きな力となるのです。ほんの数十秒でいい。朝起きたら、「今日はこういう一日にする。」夜寝る前に、「今日はこういう一日だった。明日はこうする。」と、心のど真ん中に太い志を立ててください。
東山田中学校1期生の皆さん一人ひとりの志が、2050年の社会を明るく照らしてくれることを期待しています。
最後に、この学校で、皆さんと出会えたこと、本当にうれしかった。また、いつかどこかで、お会いしましょう。1期生のみなさん、ありがとう。そして、卒業おめでとう。
平成18年3月10日
横浜市立東山田中学校
校長 本城愼之介