カガヤが忍者の名刺について書いてた。
僕は忍者の仕事ぶりを目の当たりにしたことがある。
彼の名刺は見たことがないが、きっと肩書きは「忍者」だったに違いない。
たぶん小学校2年生のとき。
全校児童が体育館に集められある人の講演を聞いた。
名前は誰だったか忘れたけど、校長先生がその人を紹介したときに発した一言は忘れない。
「●●●●さんは忍者です。」
紹介された人も「忍者の●●●●です。」と自己紹介した。
今だったら大笑いするだろうが、当時は真剣に驚いた。
その忍者は、いわゆる忍者服を着ていなかった。
オーソドックスな紺色のスーツ。
きっとその方が今の世の中は目立たないのだろう。
忍者はスピーディーに動くから、スマートな体型かと思っていたけど、
彼はお腹がたっぷりデブだった。
忍者は、高学年の男の子を数人舞台に上げ、次々とその技を披露した。
舞台で歩いている男児。
忍者が「止まれ!」と声をかけると、一声に男児の足が止まった。
しかし、手は前後に動いていた。
その姿は本当に今から思うと、可笑しいが、当時はすげーの一言。
「動け!」と声をかけると今度は動く。
「止まれ!」で、また腕だけを前後に振る男児数名。
次は、たしか勝也と利也のお兄ちゃんが実験台になった気がする。
舞台にあった2つの椅子に、頭と足を乗せる。
「あなたの体は、鉄のようにかたくなーるかたくなーる」みたいな呪文を唱えられ、
その体の上に、でぶっちょの忍者がのる。
でも勝也と利也のお兄ちゃんはびくともしない。
その次は、でぶっちょの忍者が「はーっ」と息を吐いたかと思うと、
なんとスーツのズボンのベルトがユルユルになった。
あっという間にでぶっちょ忍者は痩せたのだ。
そのほかにもいろいろやってくれたんだと思うが、
僕の記憶にはその3つの術しか残っていない。
最後に忍者はすごい術を繰り出した。
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みなさん、体育館の窓を見つめてください。
その窓を皆さんのまぶたに焼き付けます。
皆さんは、これから大人になって何年たっても、
まぶたを閉じれば、この体育館の窓が見えます。
はい、じーっと窓を見つめてください。
じーっと見つめてください。
そして、目を閉じてください。
いいですか、今から私が言うことを、大きな声で繰り返してください。
やればーできる!
「やればーできる!」
やればーできる!
「やればーできる!」
やればーできる!
「やればーできる!」
これでみなさん、いつでも体育館の窓を思い出すことができます。
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確かに目を閉じると、小学校の体育館の窓が浮かんでくるような気がする。
「やればーできる!」の呪文は話の流れ的は意味不明だ。
いろいろな術を繰り出していたスーツ忍者が、
いきなり「やればーできる!」はどう考えてもおかしい。
でも、当時の僕らはあまりそんなの関係なしで、
「そうか。やればーできる、なのか」と真剣に感動した。
やれば、できる。
忍者の技はやっぱりすごかった。