「棟梁を育てる高校 球磨工高伝統建築コースの14年」(笠井一子著、草思社)を読んだ。
日本で初、そして唯一の「伝統建築コース」の14年を追った本だ。
「伝統建築」というテーマも魅力的だが、
この本でもっとも印象的なのは、先生の「学ぶ時間」と「学ぶ姿勢」。
「伝統建築」をどう教えたらいいのか、そもそも「伝統建築」とは何か?
そこから先生達は悩み始める。
本物の伝統建築を見たことや建てたこともなかったり、体系的に学んでいない先生達が、
約20人の生徒に「伝統建築」を3年間で教える。
外部の専門家に特別講師を依頼したり、先生達が外部研修に参加できる仕組みを整えたり、
試行錯誤しながら「伝統建築」を教える。体当たり。悪戦苦闘。
きっと「教える時間」よりも「学ぶ時間」のほうが多かったのではないだろうか。
そしてそれは今も続いているのではないだろうか。
「教える時間」よりも「学ぶ時間」のほうが多い先生に教えられる生徒は、幸せだ。
一つ理想の先生像の条件が加わった。
「学ぶ姿勢がある。学ぶ時間を積極的にとっている。」